「医療用iPS細胞ストック構築に関する研究」への協力に関するQ&A集
Ⅰ 基本的な質問
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Q.1
iPS細胞とは
A.1皮膚や血液などの体の細胞に初期化因子を導入して作製される細胞です。特徴としては、ほぼ無限に増殖できること、神経細胞や筋肉の細胞など、体中全ての細胞に分化できる可能性 を持っています。
これらの特徴から、細胞移植などの再生医療への応用や、病態の再現を通した原因究明など、iPS細胞を用いた創薬や治療法の開発が期待されています。 -
Q.2
iPS細胞ストックとは
A.2拒絶反応が起きにくいHLA型の組み合わせ(HLAホモ接合体)を持つ健康なボランティアの方の 血液などから、京都大学iPS細胞研究財団(CiRA_F)において、医療用iPS細胞を作製し、保存する計画です。予めストックする事により、品質の保証されたiPS細胞を国内外の医療機関や研究機関に迅速に提供する事を目的としています。
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Q.3
なぜ骨髄バンクがこの研究に協力するのですか。
A.3この研究は、近い将来、iPS細胞を細胞移植医療へ応用するための極めて重要な基盤構築となる研究であり、これまでの治療法では病状改善の望めないような難病や外傷に苦しむ多くの患者さんへ一条の光となりうるものと期待されています。従って、日本骨髄バンクの「白血病等の血液難病に苦しむ人達を救済する」という事業目的と共通することから、日本骨髄バンクが協力することになりました。
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Q.4
骨髄バンクに登録した個人情報を利用するのは、目的外利用になるのではないか。
A.4当法人の定款( 第4条8項 その他前各号に定める事業に関連する事業)と、情報セキュリティポリシー(3.利用目的 :その他、本法人定款第4号に掲げる事業を行うため、個人情報を利用する必要があると認められるとき )に基づき、個人情報の目的内利用の範囲です。
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Q.5
だれでも協力できるのですか?
A.5この研究にご協力いただける ドナーの方は“拒絶反応”が起きにくいHLA型の組み合わせを持つドナーの方のみです。
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Q.6
HLAとは何ですか?
A.6HLAはヒト白血球型抗原(Human Leukocyte Antigen)の略。
「白血球の血液型」のひとつで、赤血球にA・B・O・ABの血液型があるように、白血球にも型があります。HLA分子は「自分と非自己(異物)」を識別するという免疫の機能を持っており、HLAの型が違うと非自己と判断します。 -
Q.7
“拒絶反応が起きにくい”とはどういうことですか。
A.7自身の持っているHLA型と異なるHLA型の細胞や臓器の移植を受けると、HLA型が違うため移植された臓器等を『異物』と認識し、(免疫)拒絶反応が起こります。そのため、細胞や臓器を移植する際には、HLA型を合わせることで、拒絶反応が起きにくくすることが重要です。
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Q.8
“拒絶反応が起きにくい”HLA型の組み合わせとは、どんな型なのですか。
A.8HLA型は父親と母親からそれぞれ子供に受け継がれますが、同じHLA型を父親と母親から受け継いだ場合、その子供のHLA型は「HLAホモ接合体」と呼ばれます。
例えば両親から同じHLA型である「①②③」を受け継いだ場合、HLA型は「①②③」の「ホモ」となります。HLA型が(①②③)(④⑤⑥)やHLA型が(①②③)(⑦⑧⑨)のようなHLA型の片方が(①②③)の患者さんに、HLA型が「①②③」 の「ホモ」の細胞を移植しても拒絶反応が起こりにくいという利点があります。 -
Q.9
HLA型の組み合わせはどのくらいあるのですか?
A.9数万通り存在しますが、そのうち“拒絶反応”が起きにくい組み合わせがあり、日本人でのその頻度は約2~4%とされています。
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Q.10
私のHLA型が“拒絶反応が起きにくい”HLA型の組み合わせなのかどうかを教えてもらえませんか。
A.10今回ご協力いただく方には、個別にお手紙をお送りしますが、HLA型については、お教えしないこととしています。
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Q.11
なぜ、HLA型を教えてもらえないの?
A.11HLA 型は、移植医療の現場において大変重要な情報です。これが一般的に公開されると骨髄バンクを含め公平な臓器提供が行われなくなる可能性や、まれですが臓器売買等が行われる心配 があります。そのためにも、第三者はもちろんドナー登録者本人にも個人を特定したHLA型はお教えしないこととしています。
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Q.12
何人くらいが対象なのですか。
A.12これまでに骨髄バンクで骨髄・末梢血幹細胞をご提供いただいたドナーの方は24,000人を超えています。そのうち、拒絶反応が起きにくいHLA型の組み合わせ(HLAホモ接合体)を持つドナーの方から取り消されたドナー、保留中などのドナーを除いた50名程度と考えています。
まずは日本人に多く見られるHLA型ホモ接合体のドナーの方から数名の方にご協力いただき、iPS細胞を作製します。
日本人で1番多い頻度のHLAホモ接合体のiPS細胞が1つあれば、日本人の約20% に対して拒絶反応が起きにくい細胞移植治療が提供可能となります。統計上、異なる75種のHLAホモ接合体ドナーからiPS細胞を作製する事で、日本人の約80% をカバ-することができます。
Ⅱ 時期に関する質問
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Q.1
いつからiPS細胞ストックの構築が始まるのか。
A.1すでに京都大学大学院医学研究科・医学部及び医学部附属病院の医の倫理委員会の承認が得られた『高頻度HLAホモ接合体ドナー由来の医療用iPS細胞ストック構築に関する研究』により、京大病院にてドナーリクルートが始まっています。
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Q.2
いつ頃iPS細胞ストックの構築が完了するのか。
A.22020年度現在、日本国内で見られる上位4種のHLA型のiPS細胞の作製が完了しています。これにより日本人の約40%に拒絶反応の少ない細胞移植が可能です。引き続き、75~150種類のiPS細胞を作製する事を目指しますが、これにより日本人の80~90%に拒絶反応の少ない細胞移植が可能になります。
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Q.3
いつ頃臨床現場で使用されるのか。
A.32020年現在、すでにこのiPS細胞ストックを使用した臨床研究や臨床試験が開始されています。そこから、治療法として確立するためには、移植しても安全であることや、治療に有効であることを文書にまとめて国へ申請する必要があります。申請が認められるまでに数年はかかりますので、医療機関などで治療に用いられるにはおおよそ10年はかかると予想されます。
Ⅲ 協力に関する質問
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Q.1
協力したいと思いますが、どうしたらいいのでしょう。
A.1お気持ちありがとうございます。
該当する方には個別にご連絡しますので、賛同いただける場合はご自身で京都大学iPS細胞研究財団(CiRA_F)に連絡していただきます。 -
Q.2
この研究に協力したくない場合は、どうしたらいいのでしょう。
A.2「ご協力」を希望されない場合、初めのご案内状に掲載されている連絡先(下記)へご連絡くだされば、「拒絶反応が起きにくいHLAの組み合わせ」をお持ちであっても、協力に関する詳しい「ご案内」は送付されません。
さらに、研究協力に関する「ご案内」を差し上げた後も研究へ協力するかどうかはご自身でご判断いただき、京都大学iPS細胞研究財団(CiRA_F)にその協力の意思を表明していただきますので、ご自身の意思に反して勝手に進められることはありません。また、協力を拒否したことにより、不利益を被る事はありません。
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Q.3
「医療用iPS細胞ストック構築に関する研究」への協力とは具体的にはどういった事をするのか。
A.3① まず、京都大学医学部附属病院のiPS細胞外来等に来院していただき、本研究について詳しくご説明いたします。(遠方の方の場合は、場所はご相談して決めさせていただきます。)
② 本研究にご理解・ご協力頂ける場合には、同意書にご署名いただきます。
③ 同意頂けた方には、担当医師が健康状態などについてご質問いたします。
④ 続けてあなたのHLA型が“拒絶反応が起こりにくい組み合わせ”であるかを確認するためHLA型の検査、また感染症検査及びiPS細胞作製に用いる血液(最大100mL程度)を採血させて頂きます。
⑤ 約3か月後に再度来院していただき、2回目の感染症の検査を行います。採血に当たっては、京都大学医学部附属病院iPS臨床開発部の医師が行います。(お越し頂くにあたり、京都大学の規定に応じて京都大学医学部附属病院までの交通費をお支払いいたします。) -
Q.4
現在服薬していますが、協力できますか。
A.4健康の確認については、京都大学iPS細胞研究財団(CiRA_F)に連絡し、直接お問い合わせいただきますようお願いします。
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Q.5
今回協力すると、また次の機会に声がかかることがありますか。
A.5現時点では未定です。
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Q.6
協力体制における骨髄バンクの役割は?
A.6骨髄または末梢血幹細胞提供歴のあるドナーに案内用チラシを配布し、そのうち、拒絶反応が起きにくいHLAの組み合わせを持つドナーの方に対して手紙を配布・郵送し、研究への参加を案内します。協力したくない方はその旨を ご連絡ください。
※以後のステップには日本骨髄バンクは関与せず、日本骨髄バンクから京都大学iPS細胞研究財団に個人情報及び検査情報は引き渡しません。 -
Q.7
協力体制におけるiPS細胞研究財団(CiRA_F)の役割は?
A.7参加を応諾したドナーの方(対象者)から連絡を受け、対象者と相談のうえ京都大学医学部附属病院への来院を依頼します。
京都大学医学部附属病院iPS細胞臨床開発部・iPS細胞外来の担当医師または担当スタッフが、ご連絡をいただいたドナーの方に対して、iPS細胞ストックについての研究の説明をし、同意が確認されたドナーの方には健康状態や検査結果を確認した上で、感染症検査及びiPS細胞作製に用いる血液(100ml程度)の採血を行い、CiRA_FにてiPS細胞を作製します。 -
Q.8
iPS細胞関連の研究への協力は、すでに日本赤十字社が一部の献血ドナーに対して行っているが、京都大学iPS細胞研究財団(CiRA_F)の研究に協力することとしたのはなぜか。
A.8当該研究は骨髄バンクの事業目的と共通(「基本的な質問」Q3参照)すること、公的助成によるものであること、また、営利を目的としないことも理由のひとつです。
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Q.9
京都大学iPS細胞研究財団(CiRA_F)は土日の電話対応はないのですか。
A.9原則、平日10:00~17:00での対応となります。本研究へご参加いただいた後はCiRA_Fの担当コーディネーターにより土日を含めて対応させていただきます。
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Q.10
検査は近くの病院でできないのですか。
A.10採血を伴う血液検査は、京都大学医学部附属病院にお越しいただくことになります。万が一に備えて救急対応が可能な環境で採血させていただきます。
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Q.11
献血をしていますが、同じような手紙をもらいました。同じ研究内容ですか?
A.11献血者に対して発送している手紙は、日本赤十字社が行っている研究協力の案内に関する手紙です。協力先/協力内容は同じですので、日本赤十字社から同様の案内があり、そちらで研究に参加中または参加終了した方は、ご連絡くださいますようお願いいいたします。
Ⅳ 個人情報について
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Q.1
自分のHLA型を知りたい。教えてもらえるのですか。
A.1HLAのタイピングに関する情報はお伝えしておりません。 (「基本的な質問」Q10、11参照)
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Q.2
個人情報は守られるのか。
A.2個人情報は、当法人からドナーご本人へiPS細胞ストックへの協力の「ご案内」を送付する目的にのみ使用いたします。当法人から京都iPS細胞研究財団(CiRA_F)に個人情報(住所、氏名、電話番号、メールアドレス)を伝えることはありません。
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Q.3
HLA型がホモタイプであるとドナーが認識したことで、不利益は無いのか。
A.3具体的なHLA型をお教えするわけではありません。また、HLA型がホモ接合体であることで健康面での支障はありません。HLA型がホモ接合体であることを知ることで、不利益を被る事もありません。
Ⅴ その他の質問
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Q.1
骨髄採取経験者に対して“iPS細胞ストック”への協力も依頼することで、協力を強制されるような意識を持たれないか。
A.1日本骨髄バンクからはドナーの方へ、バンクがこの研究に協力することを知らせ、研究協力についての「ご案内」を送付することについて、また拒否する機会を設けた上で、iPS細胞ストックへの協力についての「ご案内」を送付します。
協力するか否かは、ドナーの方、ご自身の自発的な意思で決められます。協力を拒否したことにより、不利益を被る事はありません。 -
Q.2
協力する事に伴う事故や副作用について
A.2協力する事に伴う事故や副作用が発生した場合の補償などについては、今後、同研究財団が補償の詳細を詰めていきます。
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Q.3
今回構築される“iPS細胞ストック”は誰の財産になるのか。
A.3財産(知的財産権、所有権)は、京都大学iPS細胞研究財団(CiRA_F)の財産であり、CiRA_Fが管理します。
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Q.4
造血幹細胞移植に係る法律が成立したが、“iPS細胞ストック”に関しては、法制化に向けた動きはあるのか。
A.4「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が制定されました。(平成25年11月27日公布)。 この法律の趣旨は、「再生医療等の迅速かつ安全な提供等を図るため、再生医療等を提供しようとする者が講ずべき措置を明らかにするとともに、特定細胞加工物の製造の許可等の制度等を定める。」とされており、現在、省令等についての検討が行われており、公布から1年以内に施行されます。