チャンス
-ドナー登録のしおり- 1
ドナー登録の要件と手順
ドナー登録できる方
- 骨髄・末梢血幹細胞の提供の内容を十分に理解している方
- 年齢が18歳以上、54歳以下で、健康状態が良好な方
- 体重が男性45kg 以上・女性40kg以上の方
◇ 骨髄・末梢血幹細胞を提供できる年齢は20歳以上、55歳以下です。
- 適合検索は20歳から開始されます。満55歳の誕生日※で登録取り消しになります(※コーディネート中の方を除く)
- 登録日(採血日)の時点で、満55歳の誕生日まで10日間以内である54歳の方は、適合検索の対象とならない場合があります。HLA型の検査結果などがデータベースに登録されるまでに最長10日間を要するためです。
◇ 提供にあたっては家族同意が必要です。
◇ ドナー登録後の健康状況によっては、コーディネートを進めることができないこともあります。
ドナー登録できない方
-
病気やけがなどの治療中、または処方薬使用中の方
- 高血圧に対する降圧剤服用、気管支喘息など慢性疾患治療のための服薬(塗り薬)含む、精神疾患による服薬、通院を含みます
- 治療が必要な状態が一過性で短期間で完治するものは除きます(風邪など)
-
以下の病歴がある方(治癒している場合を含みます)
悪性腫瘍(がん)、白血病、再生不良性貧血などの血液の病気、膠原病(慢性関節リウマチなど)、自己免疫疾患、先天性心疾患、心筋梗塞、狭心症などの循環器疾患、脳卒中、C型肝炎など一部のウイルス肝炎、エイズ、マラリアなどの感染症
- 血圧が高い方(最高血圧151mmHg以上/最低血圧101mmHg以上)
または低い方(最高血圧90mmHg未満) - 輸血を受けたことがある方
- 貧血の方
- 食事や薬等により呼吸困難などの症状が出たことがある方や、高度の発疹の既往がある方
- 過度の肥満の方(体重kg÷身長m÷身長mが30以上の方)
- 妊娠中および出産後1年未満の方、授乳中の方
- 腰の手術を受けたことがある方は骨髄提供はできません。
- 上記以外でも健康状態等により登録いただけない場合があります
詳しくはこちらからお問い合わせください。
命のボランティア、
ドナー登録は
2mLの採血から。
日本で非血縁者間の骨髄移植や末梢血幹細胞移植を必要としている患者さんは、毎年約2,000人を数えます。
一人でも多くの患者さんを救うには、一人でも多くのドナー登録が不可欠です。
ドナー登録者は現在55万人を超えます。
ドナー登録は、約2mLの採血で済みます。
適合するドナーの方を待ち望む患者さんにとって、あなたの登録が、命をつなぐチャンスになるかもしれません。
ドナー登録のながれ
① | チャンス(本ページ、次ページ)をよくお読みになり、登録窓口へお越しください |
② | 登録に要する時間は約15分です。窓口ではドナー登録手続きを行います。 |
- 登録窓口では冊子版チャンスの巻末にある登録申込書にご記入頂きます。
- 混雑時はお待ちいただく場合があります。
- 必要に応じて、勤務先等への提出用として、ドナー登録の手続きが行われたことを示す証明書を発行できます。
③ | 腕の静脈から約2mLを採血し、HLA型(白血球の型)を調べます。検査に費用はかかりません。 |
- 血液型(A・B・O・AB型)、感染症や健康状態を確認する検査は行いません。
- 採血した血液で遺伝子検査により、HLA型を調べます。
HLA型は、お教えしません。 - 稀に採血に伴う合併症(穿刺部痛、気分不良、皮下出血等)が起こることがあります。
- ドナー登録検査用採血を献血と同時に行っていただいた方については、検査用採血に起因する万が一の健康被害の際『献血者健康被害救済制度』が適用されます。
- 検査用検体(血液・DNA試料)は必要な検査の終了後に廃棄しますが、一部のDNA試料は、HLA検査の品質維持やHLA検査に使用する試薬を評価するために、個人の識別を不可能にした後、使用させていただきます。
④ | 後日、日本赤十字社から「登録確認書」をお送りします。 ドナー登録された方のHLA型は、患者さんのHLA型と定期的に適合検索されます。 |
- 海外骨髄バンクから依頼された海外患者さんと適合することもあります。
- 世界各国が参加するWMDA(世界骨髄バンク機構)にも参加しています。
適合から提供までのスケジュール
ドナー候補者になったら ~ 適合から提供(採取)までのスケジュール ~
1 ドナー候補者になったら
患者さんと白血球の型(HLA)が適合すると、骨髄バンクからSMS(携帯電話へのショートメッセージ)や、必要に応じて郵送でお知らせします。ご本人の提供意思とご家族のお気持ち、日程的な都合や健康状態などについて、WEB上でご回答ください。
※ご意思があっても、その時点の健康状態などにより提供いただけない場合もあります。
2 確認検査
ドナーとの連絡調整役を務めるコーディネーターが、確認検査を行う病院や日程の調整をします。確認検査では、コーディネーターが骨髄および末梢血幹細胞提供に関しての詳しい説明を行い、医師が医学的な説明と問診、健康状態などを確認するための採血をします。
3 大切な約束、最終同意
提供ドナーに選ばれると、コーディネーターと調整医師がドナーの方とご家族の最終的な提供意思を確認します。最終同意確認後、患者側は移植の準備を進めるため、その後に同意撤回すると患者が適切な治療を受けられなくなる場合があります。最終同意には重要な意味があることをご理解ください。
4 提供方法
造血幹細胞を採取する方法は、「骨髄採取」と「末梢血幹細胞採取」の2種類があり、患者さんの状況により指定されます。ドナーの方にはあらかじめ承諾できない採取方法の有無を確認します。承諾しない方法で提供を依頼されることはありません。採取前には健康診断などの必要な準備を行い、採取後にも体調の回復を確認する健康診断を実施します。
採取の方法
骨髄採取(3泊4日程度の入院)
骨髄採取は腰の骨から
骨髄液は、骨盤を形成する大きな骨=腸骨(腰の骨)から注射器で採取されます。手術室でうつ伏せになった状態で、骨盤の背中側、ベルトの位置より少し下の腸骨に、皮膚のうえから専用の針を数カ所(腸骨には左右数十カ所)刺して吸引します。採取する量は通常400~1200mLで、患者さんの体重に応じて採取量が決まります。骨髄採取は全身麻酔下で行われ、所要時間は1~3時間です。
採取後の経過
ドナーは提供後、通常2~3日で退院し、多くの方はすぐに日常生活に戻ることができます。
退院後はコーディネーターが電話で健康状態のフォローアップを続けます。採取により一時的に減った骨髄液は速やかに元に戻ります。
骨髄採取によって、以下の症状が出ることもありますが、通常は速やかに回復します
痛み | 麻酔からさめた後、採取部位(採取傷)が痛むことがあります。程度は個人差があり、1~7日間残ったという例が多く、まれに1カ月以上残った例もあります。 |
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発熱などの諸症状 | 採取後、37~38度の発熱やのどの痛み、吐き気、全身のだるさといった症状が出ることもあります。 通常は1~2日で軽快します。 |
採取のあと | 体質によっては、皮膚に少し針のあとが残る場合もあります。通常は3~6カ月で針のあとは消えます。 |
末梢血幹細胞採取(5泊6日程度の入院)
末梢血幹細胞採取は腕から
採取前の4~5日間、白血球を増やす薬(G-CSF)を注射し、4日目または5日目に末梢血(全身を流れる血液)に流れ出した造血幹細胞を専用の機器を使って採取します。腕※に針を刺し、血液中の造血幹細胞だけを取り出し、残りの血液を戻します。採取した量が不十分な場合は翌日、2回目の採取を行います。通常3~6時間を要しますが、更に時間がかかることもあります。その間、両腕は動かせません。
※万一、腕から採取できない場合は、足の付け根の血管から採取することもあります。
採取後の経過
ドナーは提供後、通常1~2日で退院し、多くの方はすぐに日常生活に戻ることができます。退院後はコーディネーターが電話で健康状態のフォローアップを続けます。
末梢血幹細胞採取によって以下の症状が出ることもありますが、通常は速やかに回復します
注射による諸症状 | 一過性のものとして、骨痛(腰痛、関節痛等)、倦怠感、頭痛、胸痛、不眠、食欲不振、悪心・嘔吐、動悸、発疹があります。痛みは鎮痛剤で消失します。 |
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採取中の諸症状 | 採取した血液が凝固するのを防ぐ抗凝固剤が投与されるため、手足のしびれ・口の周りのしびれなどがでる場合があります。多くの場合、カルシウム剤を投与することで改善します。 |
採取のあと | 血小板が減少することがありますが、その際は適切な処置を行います。また、針を刺したところが青くなることがありますが、通常は1~3週間で消えます。 |
リスクと補償
採取に伴うリスクと補償
骨髄・末梢血幹細胞の提供ではドナーの安全が最優先されますが、過去にはドナーに健康上の被害が生じた事例があります。いずれの場合も治療によりドナーは回復し、通常の生活に戻っています。日本骨髄バンクでは全国の採取施設に対して厳重な注意を呼びかけ、このような事例の再発防止に努めています。
健康被害が起きた場合の補償制度
骨髄・末梢血幹細胞の提供の際、万一健康被害が起こった場合は最高1億円の補償制度があります。死亡の際には一律1億円、後遺症には程度により400万円~1億円が補償されます。これまで骨髄バンクでは1993年の第1例実施から、2023年3月末までに2万7千例以上の骨髄・末梢血幹細胞採取が実施されましたが、このうち242例に入通院保険などが適用されています。
主な健康被害(2024年1月現在)
骨髄採取の場合
骨髄提供後、急性C型肝炎を発症した事例(1998年3月)
調査の結果、骨髄提供のための入院中に感染した可能性があることが報告されました。
骨髄採取後、後腹膜血腫ができた事例(2000年9月)
ドナーが下腹部痛を訴え、後腹膜部位に血腫があることが確認されました。採取針が骨を貫通し血管を傷つけたため大量の内出血をおこした可能性が指摘されました。
骨髄提供後、左中殿筋内に血腫ができた事例(2015年3月)
採取終了後、左中殿筋内に血腫があることが確認され、動脈塞栓術を実施しました。
骨髄採取後、急性の腎機能障害を発症した事例(2016年11月)
骨髄提供直後から、嘔気・嘔吐、下腹部痛といった症状が現れ、腎機能障害が認められた事例が報告されました。施設の自己血管理方法や採取手技等に問題はなく、血管内溶血の原因を特定することはできませんでした。腎機能障害については、採取前から不顕性の異常があった可能性があることが報告されました。
骨髄採取後に尿道損傷を認め、退院後再出血した事例(2017年6月)
骨髄採取後に尿道損傷を認め、退院後再出血した事例が報告されました。骨髄採取の翌々日、尿道からの出血がないこと、排尿に問題ないことから退院されましたが、退院後勤務中に出血を認め、救急搬送、泌尿器科にて処置した後、帰宅となりました。原因は、手術室で挿入した膀胱留置カテーテルによる尿道損傷と報告されました。
骨髄バンクでは、造血幹細胞採取の安全性についてみなさまに正しい情報を得ていただけるよう、情報公開に努めています。
詳細はこちらをご覧ください。
末梢血幹細胞採取の場合
末梢血幹細胞を採取し、退院後に発熱・骨痛のため再入院となった事例(2018年8月)
非血縁者間末梢血幹細胞採取を実施し、退院後に発熱と強い骨痛のため、再入院となった事例が報告されました。
末梢血幹細胞を採取し、退院後に壊死性筋膜炎のため緊急手術した事例(2023年4月)
末梢血幹細胞採取5日後に壊死性筋膜炎のため緊急手術した事例が報告されました。
■ | 死亡事例:日本の骨髄バンクを介した骨髄・末梢血幹細胞採取では1例もありません |
[骨髄採取]
過去に海外で5例(血縁者間3例、非血縁者間2例)、日本で1例(1990年、骨髄バンクを介さない血縁者間)のドナー死亡事例が報告されています。健康なドナーであっても通常の手術と同様に、麻酔中に緊急の処置を行う可能性がわずかながらあるため、採取病院では最大限の注意をはらい、万全の態勢で骨髄採取を行います。
[末梢血幹細胞提供]
末梢血幹細胞提供ドナーの死亡事例は、日本では血縁者間・非血縁者間ともに発生していません。世界では計12例のドナー死亡事例が報告されています。このうち多くは、ドナーが高齢であったり、もともと病気を有していた等、何らかの危険因子があったためで、末梢血幹細胞採取との因果関係は明らかではありません。日本では2000年に血縁者間の末梢血幹細胞移植が開始され、現在では年間約1300例前後行われています。骨髄バンクを介した非血縁者間の末梢血幹細胞移植は2010年に開始されました。
〈参考〉
血縁者間の骨髄および末梢血幹細胞ドナーにおいて報告された有害事象は日本造血・免疫細胞療法学会がホームページで公開しています。
骨髄提供者へのアンケート結果
入院にかかった日数や骨髄提供への率直な感想など、骨髄提供を経験した方へのさまざまなアンケート結果です(直近5年間)。ドナー登録をご検討いただくうえで、ぜひ参考にしてください。
- 末梢血幹細胞提供者へのアンケート結果はホームページをご覧ください。
骨髄提供者へのアンケート内容(『ドナーのためのハンドブック』より)
提供後3カ月アンケートより
(回答数3,242)
ドナーさんからのメッセージ
誰かを救う決断は宝物
いざ「ドナーになる選択」を突きつけられると、動揺する自分がいました。登録時の説明内容も、移植の必要性やリスクも、頭では理解していましたが、改めて事の重大さを考えると、やっぱり少し怖くて簡単に決断はできませんでした。でも、それから悩んだ時間、考えたこと、決断してからの出来事は、私にとって人生の財産になりました。私が一番伝えたいのは、“自分の決断で誰かを救える”ということ。そして、それは間違いなく自分の宝物になるということです。僕のような経験をする人が、一人でも増えることを祈ります。
勤務先のみんなに感謝
勤務先は社員が20名ほどです。「自分が休めば同僚に迷惑がかかる」と、以前候補になったときはあきらめ、残念な思いが残りました。
二度目に候補になったときに思い切って社長に気持ちを伝えたところ、「立派だね」と。うれしかったですね。健診や入院、提供のためにたくさん休ませてもらいましたが、同僚のカバーで何とか無事に提供でき、ホッとしました。みんなに感謝です。ドナーの負担のことはあまり知られていませんが、もう少し広まって、理解を得られやすくなるといいな、と思います。
ドナー休暇制度・公欠制度
ドナーになる従業員が、検査や面談・入院などのために取得する休暇を、勤務先が特別休暇として認める制度です。「ボランティア休暇」などの適用範囲としている企業もあり、ドナーの負担が軽減されています。学生の方には授業を休むことを学校が「公欠」として認める「ドナー公欠制度」もあります。