2020年、骨髄採取の入院時期と大学の学科試験が重なってしまった上村宗平さん。
コロナ禍がもたらした思わぬ状況で、無事に採取も試験も終えた稀有なエピソードを紹介します。
(この体験談は、日本骨髄バンクニュース第57号[2020年12月2日発行]でもご紹介しています)
PROFILE
上村宗平(うえむら そうへい)さん
2019年12月ドナー登録
2020年6月骨髄提供
上村宗平さんは、高校時代から長距離ランナーとして体を鍛え、現在大学5年生。学部はスポーツ健康科学部の運動科学系を専攻。日頃から献血とドナー登録をしていたお母さまに誘われて、2019年12月頃に初めて献血に行き、同行したお姉さまと一緒に軽い気持ちでドナー登録しました。
それから数か月経った2020年、宗平さんに適合通知が届きました。自分も家族もあまりの速さに驚いたそうですが、本人の実感は『そんなもんかな』と思った程度とのこと。
当時まさにコロナ禍で緊急事態宣言が発令。全国的に外出制限が敷かれ、通っていた大学でも卒業・入学式を中止、全科目オンライン授業が導入されました。
そのような中、確認検査を経て提供ドナーに選ばれ、最終同意面談へと順調に進み、採取日程は6月上旬に決定。ところが大学の前期試験も同時期で、試験科目の1つは3回に分けてオンライン試験で行うことになっており、そのうちの1回がちょうど入院期間と重なってしまいました。
学部に相談したところ、「試験日程を変えることはできないが、人命救助のほうが大切なので考慮します。詳細はまた連絡します」と言われ、予定どおりオンライン試験を受けることに。
しかし、具体的にどのように考慮されたのかは連絡が来ないまま入院。
『しかたないけど、なんとかなるさ』と焦りもせず、骨髄採取に臨みました。採取は無事に終了しましたが、術後は全身麻酔の副作用で吐き気と手足のしびれ、のどの渇きがありました。印象に残ったことといえば、『あまり麻酔は得意じゃないかも』。
採取の翌日、多少不調はあったものの、病室内でスマホを使ってオンライン試験に参加。選択問題を30分くらいで終了。ぶじに試験をやり終えることができました。
コロナの影響で入院中は面会禁止でしたが、退院時はお母さまとコーディネーターが出迎えました。少し腰の痛みがあるものの、すっかり体調は回復していました。
骨髄提供を経験した感想を尋ねると、『自分の骨髄液が無事に届いて、患者さんが元気になってくれればそれでいいです』。もう1度適合したら?『また提供します』。
当たり前のように淡々とドナー体験を受け止めていた様子が印象的でした。