夫婦でドナー登録をしている竹村さん。実はJMDPの職員です。奥さんより先に登録後1年半で提供しました。

16歳になる長女が急性リンパ性白血病だったんです。化学療法で治りましたけれど、そういうこともあって我が家では骨髄バンク登録については、いわば当たり前のことでした。いずれは私も登録しなきゃという気持ちありましたが、新たな職場が背中を押したようなものですね。それまでは、登録の手続きが面倒で仕方なかったんです。ちょっと腰が上がらなかったですね。転職の機会があったので、ある程度、時間に余裕ができたからという面もありました。

財団からの封書が自宅に届いたとき、家にいた妻から「バンクから封筒が届いてるけど、選ばれたんじゃないの？開けていいかしら」って電話が、職場にあったんですが、「へえ、そうなんだ。当たるものなんだ」って印象でしたね。

いえいえ。確認検査まではスムーズに進んだんですが、そのあと患者さんの都合でコーディネートは 3カ月の保留となり、それが解けたら今度は「選定保留になりました」という連絡があったんです。1番目に適合しているドナー候補者の術前検査が終わるまでのバックアップ状態ですよね。でも、最終同意からは早かったですよ。提供は、最終同意からそう時間がたっていないころですから。

駅まで自転車通勤なんですが、それまでは赤信号もけっこう無視してました。でも、ドナーに決まってからは、赤信号は守るしプラットホームの端は歩かないし、先頭車両には乗らないようにしましたね。夏場でしたから、健康面ではクーラーをかけすぎないように注意しました。

採取前の術前検査が、確認検査と違ってずいぶん大変なんですよ。呼吸器や心電図検査なんかもあったりで「こんなにも...」という思いでしたね。でも、この検査が患者さんや私の健康を第一に考えているんだなぁと実感しました。それと採取病院が意外と遠いところで大変でした。

入院前から、だんだん緊張するんですよ。病室に泊まるという経験がありませんでしたし、手術室にいる自分を想像すると背筋がゾクゾクするんです。でも、財団がドナーの適格性と採取基準をしっかりつくったんですから、そこに安心感はありました。

そうなんです。麻酔から覚めてももうろうとしていて、記憶が定かじゃないんですよ。手帳に書き付けてあったから当日の様子が分かるようなものですね。朝は6時に起きて朝、昼とも食事抜きで、正午に精神安定剤を飲んで血圧を計り、午後1時に手術室に入って......そこからの記憶がないんです。病室に戻ってきたのが夕方の4時ごろでした。

採取した場所には分厚いガーゼが巻かれていて、痛みそのものはありませんでした。ただ、仰向けに寝るときには腰を少し浮かせなくてはいけなかったので、腹筋が痛みましたね。自己血の輸血が手の甲からだったらしく、そこが痛かったのを覚えています。


「とにかく終わった」という安堵感が最初にありました。きちんと覚醒できていなかったのか、採取直後のことはあんまり覚えていないんです。だから、自分がきちんと提供できたということは頭にあったんですが、患者さんのことを思う余裕までありませんでした。でも、夜になってから「私の骨髄液が患者さんの体の中で力を発揮してくれー」と祈ったのを覚えています。

提供後に妻に電話したら、無事に終わったかどうか連絡もなかったから心配していたと言われました。痛みが無いか、身体を心配してくれていましたね。あと、患者さんが元気になるといいねとも。実は入院用具の中に娘からの手紙が入っていたんです。「お医者さんの言うことを聞くのよ。でも、あんまり我慢しないで、言いたいことは言って、患者さんのために頑張ってね」って書いてありました。それは励みになりましたね。