「ドナーさんの決断の一つ一つが私の命を救ってくれた」
結婚から半年で急性リンパ性白血病を発症し、移植を受けた渡邉さん。自身の闘病生活と、移植を経て得た気づきについて語ってくれました。
PROFILE
渡邉雄太(わたなべ ゆうた)さん
長野県在住。
2023年に急性リンパ性白血病を発症。
現在は自宅療養中。
最初は、化学療法だけで治療を進める予定でした。しかし「寛解導入療法」という治療が終わったところで、多くの患者さんがなると言われている血液学的寛解という状況にならず、難治性の白血病に入るかもしれないということで、骨髄移植をする方針が決まりました。
その後の抗がん剤治療で一度血液学的寛解を達成したのですが、すぐに再発しました。これまでは心のどこかで「自分は絶対に大丈夫だ」という気持ちがあったので、強く打ちのめされると同時に「この病気はなんて不条理なのだろう」と思いました。このときはショックが大きすぎて、泣くこともできませんでした。どこか他人事のように考えることで深刻な事態を受け止めることを拒絶していたように思います。投げやりな気持ちになり、とても落ち込みました。
それでも、妻が毎日病院に来てくれて私のために泣いてくれたり、離れたところに住んでいる両親が、遠くから見舞いに来てくれたりしたことで、今までもこれからも自分は1人で生きているわけではないということを強く感じました。ドナーさんも100%善意で私に骨髄を提供してくださるので、ドナーさんのことを考えると熱い気持ちになってきて、新しい命をいただくからには自分のためだけじゃなく、誰かのために長生きできるように治療を頑張ろうという気持ちになりました。
もともと運動が好きでロードバイクが趣味だったので、無菌室にいるときは外の空気に触れることができないのがつらかったです。ただ、入院中に映画を見たり、音楽を聴いたり、忙しく生活しているとじっくり味わえないようなことができて、そういう意味では新しい自分に出会えたかなと思っています。
入院中、時間だけはたくさんあったので、時間の使い方が少し変わって、今まで蔑ろにしてきたことや、時間がなくて考えてこなかったことを考えることができました。そんな中で妻や家族、大切な人たちと過ごす時間が人生においてとても大切なことだと気づくことができました。病室で妻と電話をしているときに「退院出来たら旅行に行きたいね」と話をしていたので、今後はそういうものが一つ一つできるようになるといいかなと思っています。
病気になったことは絶対に肯定できないけど、そういう気づきを得られたことで、病気になる前の自分より今の自分ことが好きになりましたし、人生の大きなターニングポイントになりました。
【ドナーさんへ】
ドナーさんの決断の一つ一つが私の命を救ってくれました。その選択の1つでも抜けていれば、今の生活はなかったと思うので、とても感謝しています。この気持ちを忘れずに充実した人生を過ごしていこうと思います。
【同じく病気と闘っている方へ】
白血病は明確な原因がなくて、本当に不条理で憎らしい病気だと今でも思っています。それでも治療の苦しみを乗り越えた先に、人の温かさや、普通に生活できることへのありがたみを強く感じることができるようになりました。この感覚は、死の淵で闘った人にしか分からない特別なことだと思っているので、辛い今を乗り越えてこそ、平穏な生活に戻れた時に大きな希望が待っているということを伝えたいと思います。