中学2年生の時、急性混合性白血病を発症。
必ずまたバレエを踊れるようになりたいという想いを胸に病気と闘い、13歳の時に骨髄移植を受ける。

PROFILE
三木 まりあ(みき まりあ)さん
広島県廿日市市出身。
3歳からバレエを始め、中学2年生の時に急性混合性白血病を発症。
必ずまたバレエを踊れるようになりたいという想いを胸に病気と闘い、13歳の時に骨髄移植を受ける。
バレエを続けながら看護師国家資格も取得。
骨髄バンクユースアンバサダーとしても活動中。
中学2年生の秋、体調不良が何日か続き、近くの病院で風邪と診断されました。ところが数日後、座っていられないほど腰が痛くなったため、学校を休み母と総合病院へ行きました。整形外科を受診したところ、血液の数値に異常があり別の病院へ行くことになりました。
説明もないままたくさんの検査をされ、気づくと窓の外は真っ暗に。出張先から駆けつけた父に「いつ帰れるの?」と聞いた記憶があります。ですが、連れていかれたのは無菌室というビニールに囲まれた殺風景な1人部屋でした。そこで医師から約1年間入院しなければならないと告げられました。両親の希望で病名は伝えられていませんでしたが、「急性混合性白血病」という病気でした。
当時はバレエ漬けの生活を送っており、数週間後に国際コンクールを控えていました。急に入院が決まり、バレエができなくなったことが悲しくて、悔しくて、毎日毎日泣きました。病院の先生や両親に当たってしまうことも多くありました。
それまで、バレリーナになりたいという夢を追いかけ、何よりもバレエを優先してきた私にとって、1年間練習ができないことや、抗がん剤の治療で髪が抜けることが、本当に本当にショックで立ち直れないほどでした。
「早くバレエが踊れるようになりたい、病気を克服して、絶対また舞台に立つんだ」。その一心で闘病に励みました。
きょうだいがドナーになれる確率は25%、弟が白血球の型を調べてくれましたが合いませんでした。骨髄バンクに登録してドナーが見つかるまでは、治療を続けながら待つことしかできません。3ヶ月がたった頃、ドナーの方が見つかり、同意がいただけたら移植ができると言われました。とてもありがたいという想いと同時に、移植のリスクに怖さも感じました。前処置中は何を食べても気持ちが悪く、嘔気・嘔吐が常にありました。特にしんどかったのは口内炎です。口の中だけでなく喉の方まで炎症が起きて、何も食べられない状況がつらかったです。
「移植」は輸血のように、造血幹細胞を点滴で投与します。移植当日、無菌室には主治医に加え2、3人の血液内科の先生が揃っていて、手術のように妙に仰々しく始まったのを覚えています。
移植開始。
ドナーさんからいただいた造血幹細胞が静かに身体に入っていきました。
母は私に『まりあのなかに小さな神様が入るんだよ。その神様がまりあのことをいつも守ってくれるよ。』と話してくれました。見た目は血を入れるだけですが、人が生まれ変わるといいますか、ドナーさんが本当に神様のような存在で、私の中に入って生かしてくれるのだと感じました。
移植から10日が経ったころ、全身に赤い発疹がでました。1ヶ月後にはさらに酷くなり3ヶ月くらい続きました。耳鳴りや頭痛は常にあり、寝込むこともありました。しかし幸いなことに、重度のGVHD(合併症)を発症することはなく、家族の協力もあり順調に回復していきました。
ドナーさんに命を救っていただいた身として、骨髄バンクの存在やドナー登録の重要性などについて広め、1人でも多くの命を繋いでいきたいという思いがあります。
また、闘病中、医療は看護師なしでは成り立たないということに気づきました。患者に対する声掛けや気遣いをしながら、手際良く処置をこなしている看護師の仕事に惹き付けられました。そこで医療のことや患者とのかかわりについて学びたいと思い、大学で看護学を専攻し看護士国家資格を取得しました。
そして闘病中、もうひとつ大きな気持ちの変化がありました。それは夢であったバレリーナについてです。小さな頃に抱いていた夢は大きなバレエ団に所属し、舞台の上で踊るバレリーナです。しかし、寛解後に私が目指したのは、闘病中の方に寄り添うバレリーナです。求められたらどこにでも飛んでいってパフォーマンスをするバレリーナになりたい。それは、同じように闘病をし、辛い経験をした私にしか出来ない事だと思いました。そのため、いまはバレエの講師をしつつ、踊ることを続けています。
・闘病中の患者さんへ
様々な薬や治療の副作用、将来の不安など辛いことがたくさんあるかと思います。私は闘病中、窓の外を見るとみんな普通に生活していて、進んでいて「いいな、ずるいな、悔しい」なんて思うこともありました。日常って当たり前じゃなかったんだ。とても幸せだったんだと気づきました。
社会復帰、ドキドキしました。
なかなか追いつけないだろうと。
ですが、そんなことはありませんでした。周りの人は、あなたが思っているほど進んでいないです。追い抜かれることもあるかもしれませんが、病気を乗り越えようと頑張った人間が強くならないわけがありません。すぐに追いついて、強い精神力、パワー、痛みに共感できる優しさを兼ね備えた、新しい自分に出会えます。
闘病は楽なことではありません。簡単に励ますことなんてできません。
ですが寛解して元気になっている人がたくさんいるということを希望に思っていただけたら。共に闘いましょう。
・ドナーさんへ
命を繋いでくださりありがとうございます。ドナーさんのおかげで今も大好きなバレエを続けています。本当に感謝しかありません。