大学2年生のときにドナー登録し、その翌年適合通知が届き、骨髄提供に至った小倉さん。「自分の決断で誰かを救えることが、自分の宝物になることを伝えたい」と語ります。
大学2年生のときにドナー登録し、その翌年適合通知が届き、骨髄提供に至った小倉さん。勉学のかたわらバレーボール部で汗を流す日々に、これまで意識することのなかった「いのち」について考える機会が訪れました。その貴重な体験を通して、「自分の決断で誰かを救えることが、自分の宝物になることを伝えたい」と語ります。 (この体験談は、日本骨髄バンクニュース第55号[2019年12月4日発行]でもご紹介しています)
PROFILE
小倉鉄平さん
ドナー登録は、献血に抵抗のなかった私にとっては特にハードルの高いものではありませんでした。しかし、大学3年を迎えた2019年4月、ドナー候補者に選ばれたとの通知が。
いざドナーになる選択を目の前に突きつけられると、動揺している自分がいました。もちろん、登録時の説明内容も、移植の必要性や自分へのリスクも頭では理解していました。でも改めて事の重大さを考えるとやっぱり少し怖いと思ったし、簡単に決断はできませんでした。それから悩んだ時間、考えたこと、決断してからの出来事は私にとって人生の財産になりました。
普段意識することのない、いのちについて考える時間が増えました。病床に伏す人たちに思いを馳せ、無菌室から出られない子どもたちの日々を想像しました。突然血液の病と宣告され、日常を取り上げられた人の苦しみが思い浮かびました。涙が溢れ、自分の幸せに感謝しました。自分で決めた未来を創れる、いくらでもやり直せる、そんな自分を認めてくれる人達がいる。人に恵まれていることに気がつきました。
ドナーになるかどうか迷う自分に寄り添って背中を押してくれた両親や、ドナーになる選択を讃えて理解してくれる仲間たちがいる。意識なんてしなくても当たり前にあった大きな幸せを、誰かに分けられるチャンスが目の前にある。その素晴らしい奇跡に立ち会える。こんな気持ちになったのは生まれて初めてでした。
「若者のドナー登録が少ない」「ドナー候補に選ばれても仕事や家庭の事情で引き受けられない人がいる」など、骨髄バンクには問題点もたくさんあります。それも少しずつ伝えていかなければなりません。
でも今、私が一番伝えたいのは、"自分の決断で誰かを救える"ということ。そしてそれは間違いなく自分の宝物になるということです。僕のような経験をする人が、一人でも増えることを祈ります。